2025年8月15日、「金曜ロードショー」にて、スタジオジブリの名作『火垂るの墓』が放送されることが決定しました。
日本テレビ系列での地上波放送は、実に7年ぶりとなります。
なぜ放送されなくなっていたのか?
『火垂るの墓』はこれまで13回放送され、最後の放送は2018年4月13日。高畑勲監督の追悼という形での放映でした。
「戦争を描いた残酷な作品だから、放送禁止になったのでは?」という憶測もありましたが、日本テレビ側はこれを否定。ただし、放送中止の明確な理由は語られていません。
視聴率を振り返ると、6回目の放送では21.5%(ビデオリサーチ調べ)と高い数字を記録したものの、13回目には6.7%まで下落。数字の低迷が影響していたことは否めません。
作品の概要
本作は、作家・野坂昭如による短編小説が原作。1967年、『オール讀物』誌に発表されました。
兵庫県神戸市・西宮市を舞台に、戦時下を生き抜こうとする兄妹の姿を描いています。野坂自身の戦争体験をベースにしたリアルな描写は、映画・漫画・テレビドラマ・合唱組曲など、様々な形で語り継がれています。
原作に込められた想い
物語には脚色があるものの、妹との死別という主題には、野坂の実体験が色濃く反映されています。
実際に野坂は、下の妹を疎開先で亡くしており、その出来事に対する贖罪と鎮魂の想いが、本作の創作動機となっています。
主人公・清太は、自身の「よき兄でありたかった」理想を投影した存在でもあるのです。
監督を務めた高畑勲は本作について、「単なる反戦映画ではなく、戦争の中を必死に生きた普通の子どもたちの物語」と語っています。
この思いは、キャッチコピー「4歳と14歳で、生きようと思った」「忘れ物を、届けにきました」にも込められています。
アニメとしての特徴
『火垂るの墓』は、アニメーションとしても非常に特徴的です。
通常のアニメが数秒のカットを積み重ねて描くのに対し、本作には30秒を超える長回しのカットが複数存在します。節子が亡くなるシーンでは、なんと52秒もの時間をかけて描写されました。
原作者・野坂も、背景や表情の描写の緻密さに驚いたと語っています。
まとめ:平和ボケへの問いかけ
冒頭、「僕は死んだ。」という衝撃のモノローグで始まる本作は、視聴者に強烈なメッセージを突きつけます。
戦争の悲惨さだけでなく、それを「悲惨」と思える私たち自身の平和ボケにも疑問を投げかけているようです。
今年の8月15日、物語の登場人物たちの言動を「不自然」と切り捨てるのではなく、それが「生き抜くための自然な選択」であったことに思いを馳せる機会にしたいところです。
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